忘れられない言葉/南波 瑠以
、知覚過敏で痛みだけが全身に走るだけだった。
この事故があって、当たり前なことが当たり前に出来るということは奇跡的なことなのだと実感した。そしてその奇跡は本当に幸せなことなのだと、今でも思っている。でも時々それを忘れてしまうこともある。千恵さんの言葉は、それを繰り返すたび私に大切なことを思い出させてくれる。
あの日。ゴロリと回り、大の字に床へ転がったのが分かった。意識はあったが、何が起きたのか分からず、ただただグルグルと回る天井を見ていた。顧問の先生や部活の仲間が駆け寄ってくる音が、頭の遠くの方で聞こえた。なぜだろう…不思議と私を覗き込む顔が潤んで見えた。
(たいしたことないのに)
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