「落陽」(3/3)/月乃助
に熱く感じる。その手が、わずかに娘の小指に触れたかと思うと、しっかりと娘の手を握り締めた。
彼が帰国してしまったらもう会えない。彼のことは忘れないといけないと思っていた娘に、その言葉が心の中にゆっくりと沈んで行き、貝殻が海の砂に静かに埋もれるように、心の底にぽつんと落とされた。四年の数字が現れて消えた。そんなに長くの間、待っていてくれるのだろうか?信じていいの、本当に?そんなことができるの?と、問いただす言葉が口に上りそうになる。でも、そんな言葉を言わせたくないのか、彼の温かな唇が娘の口をふさいだ。
娘は、その唇がもう一度、待っているからと動くのを、見つめていた。
何も言えずに、それで
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