「落陽」(3/3)/月乃助
娘をほっとさせる。
「ここはね、私が町の中で一番好きなところ、庭園、ダウンタウン、インナー・ハーバーそんなところより、どこよりもここが好きなの」
「そう」と、彼は短く答えた。
「そうって、誰にも教えたことなかったんだから」娘は、彼にもっと感謝してもらいたかった。そこは、彼女の秘密の場所。友達も連れてきたことがなかった特別の場所なのだから。すると彼は、その景色に向かったまま話しかけた。
「俺、日本で待っているから、お前のこと」
「……え」すぐには返す言葉が出てこなかった。
心臓がドキドキし始める、彼に初めて手を握られた時と同じ。
彼の手は娘の手のすぐ横で、燃え残った炭火のように熱
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