「落陽」(2/3)/月乃助
た。
娘は大学のことを教えてもらい、カフェテリアで何度も昼食を一緒にしたりしているうちに、知らずに彼が好きになっていた。落ち着いていて、それでいて、時に饒舌となる彼に恋をし、いつの間にかそれに彼が答えてくれていた。
その彼が今、娘のすぐ横を伏目がちに歩いている。
さっきまで降ったり止んだりしていた霧のような秋雨は、どうやら今は止んでくれたようだった。
せっかく丘からの夕陽を見せてあげようと思っていた娘は、低い空を覆う雲が恨めしかった。
細い道を上がりきると、気象台の駐車場が右手に見えて来た。この丘には住宅も立ち並んでいて、娘はここの住人たちは毎日素敵な景色が見れるんだと、大きな
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