「落陽」(2/3)/月乃助
出会いは不思議と偶然でも、あの時でなくてもいつかきっとそうなったと思うほど、二人何かに導かれるように知り合った。
大学の図書館で、いくらもない日本語の本の中から、読めそうな小説をさがしている時に彼に初めて出会った。まだその時は、大学に日本人の知り合いがいなくて、それで、少し勇気をだし彼女の方から声をかけたが、自分から男の人に声をかけたのは生まれて初めてだった。でも、そうさせたのは彼の手が吉本ばななの本に伸びて、その本を借りようとしたから。それは、娘の一番好きな作家だった。本を選ぶしぐさから、彼がその作家を知っていて、その本を棚から取り出したのが見てとれた。そんな単純なたわいもない理由だった。
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