「あざらしの島」(4)/月乃助
女の住んでいたという灯台のある島の家を借り、そこで、暮らすことにした。海の声がそう教えてくれているようだった。
昼に仕事を終えると、男は島に戻り、菜園の手入れをした。
リンゴはパイにして、冷凍庫いっぱいに冷凍にしてある。
時間があれば、波打ち際でアザラシの寝転ぶ姿を見、アザラシ達がする話に耳を傾けた。
シャチに追われた話に一番苦労を感じ、獲物に食べたサーモンの大きさを競う話に一番退屈した。それでも、中には町で人と住んだというアザラシもいて、それは、他のアザラシ達は信じる事はなかったが、男はそんなこともあるのかとその愛嬌のある顔を見つめた。
海の声を聞きながら、波の意思を知る。
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