「あざらしの島」(4)/月乃助
、それを箱いっぱいに摘んだ。
それを見ながら、男は、女がアップル・パイが好きでよく焼いてくれたのを思い出した。もし、女がこの島に戻ってきたら、おいしいパイを焼いてやれると、そう思った。そして、その時には、男の娘にも会うことができるだろう。
男は女と別れると別な港町に移り、そこで暮らした。女が海の声を聞くように、自分もそれができるのか、一人で試してみたかった。それができた時には、本当に女のことが分かるような気がした。そして、今では、少し海の声が聞けるようになった。だから、男はこの町に戻ってきた。
でも、ここにはもう女も、そして、町の者達が言う、男の娘もいなかった。
男は、それでも女の
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