シンスキーの世界、その後/テシノ
決断にかかっていた。
森にいれば、奴はそれを神から与えられた範囲で自己選択したのだろう。
メカチックなその虫は、蛹から孵るとひと夏だけを成虫として過ごす。
その間に相手を見つけて生殖し子孫を残すのだ。そして夏の終わりに死んでいく。
「子孫を残す」
生き物最大の目的であるこれが終われば、その個体の役目も終わり。
何とも清々しいわかりやすさのシステムである。
10月に入ってから、私に虫をくれた男性と会う機会があった。
彼の飼っている虫達は、既に成虫の世代が終わり、卵ばかりとなっていた。
生殖と産卵が済むと、成虫達はスカスカになって死んでいくのだという事だった。
スカスカとい
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