「波の声をきいて」(13)/月乃助
 
に鞄の中で体を動かすのが、持っている紐にも伝わってくる。それは、海に住むものの、待ちわびたものを手にできる期待なのがSayoにも分かる。
 やっと帰れるという安堵の気持ち。それは自分のいるべき場所へ戻るという動物の帰巣本能がもたらすもの。
 磯浜は潮が満ちていて、静か過ぎる波が岩を洗っていた。
「ねえ、マム。もしまたどっかでアザラシがいてさ、あたしが声をかけたら、Penneのこと教えてくれるかな?それで、Penneがどうしてるか分かるかもね」
「Hiromi…」
「そんなの、おもしろくない。あたし…、あたしさ、灯台の島に戻りたくなった」
「…そうね、いつか戻るかもね」
 Sayoは、
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