「波の声をきいて」(13)/月乃助
って来ようとしたりしたら危険すぎるし。
Sayoは、それでもそんなことがありもしないのは分かっている、野生の海峡に住む普通のアザラシが、Penneとひと時名づけられ、そのアザラシが今、海に戻るだけ。Penneにまた会ことは期待できそうもない。それは、Hiromiにも分かっているだろう。
Sayoは最後に夕食用にSayoとHiromiのために買っておいたサカイ・サーモンの切り身をPenneにやると、生地のしっかりとしたその旅行カバンにアザラシを押し込み、ジッパーを半分ほど閉めた。Penneはそれほど抗うこともないのは、Hiromiがそう話をしてくれたためらしかった。ようやく、海に戻れる。
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