「波の声をきいて」(12)/月乃助
 
く、常識を知らないの、アシカを部屋に入れるなんて」
「アシカじゃなくてアザラシ…」
 ミセス・ロスは今度は何も言わずに冷たい目を向けた。
 Sayoは、もうばれてしまったのならしょうがないと腹を括り、これ以上水に油を注ぐようなことにならないよう、そのあとの言い訳の言葉は飲み込み、すぐに、アザラシを部屋から連れ出すと約束した。
「今すぐに、それに、絨毯と壁と、クリーニングをしてもらいます。それでも臭いが消えなかったら、ペンキを塗りなおしますからね。経費は、ディポジットから差し引きますから宜しいですね」
 ミセス・ロスは、その時になって部屋の臭いのひどさを思い出したように、口と鼻を皺の手で覆
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