「波の声をきいて」(12)/月乃助
 
で覆うとまた、罵る言葉を残し出て行ってしまった。
 マネージャーの言う言葉を聞きながら、SayoはHiromiのことを思っていた。
 でも、もう元気なら、アザラシを海に帰せということだろう。Sayoはすべて、自分にもたらされることが、自分を向かわせる方向に自然と進んで行きやすいように、決断を下す。そうずっとしてきた。
 もう、Penneは大丈夫だということ。
 さすがにPenneも、ミセス・ロスの剣幕に何か察知した様子で、窓辺からSayoの方を顔を上げて見つめていた。
 もう、大丈夫だから。そうアザラシが言った。そう思えた。
 それは、海獣が魚を追うときに使う音波のようなもので語りかけているらしかった。それとも、Sayoの思い込みが、そう理解させるのか。Sayoがもう一度、Penneを見つめると、アザラシは、もう首を落とすようにまどろみの中にもどり目を閉じていた。答えはもうきまっていると、そんなふうだった。
(つづく)

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