「波の声をきいて」(10)/月乃助
 
の会話に、アザラシは顔を向け注意深くアイスピックで刺したような穴だけの耳で聞いている。
「大丈夫、さっきバス・タブの中でしてたから。それよりも、魚はどうだったの?この子やっぱり一日二、三キロは食べると思う。お腹まだ空いているって言うし」
「多分、それくらいなら、大丈夫かも。バケツに一杯、雑魚をもらってきたし、サーモンの頭や内臓なんかもマーケットではかなりな量を捨ててるみたいだから、それも、もらってこられるしね」
 そう言いながらSayoは、ドアのすぐ横に置いたバケツを指差した。サーモンの光る頭が黒目を見せて一番上にのっていた。
 Penneは、もうその臭いが分かるのか、首を上げて鼻でその臭
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