「波の声をきいて」(10)/月乃助
 
き抜く力強さを見てきたから、きっと、Penneにもそんなものがあたわっているのだと思う。
 片足を失ったカモメは、完全なバランスで家の窓辺に来て、食べ物のおこぼれを期待していたし、シャチに襲われたアシカは、胸の食いちぎられた肉を垂らしながら死なずにいた。小川でみた産卵に上がってきた力尽きたようなサーモンは、カラスに目を啄ばまれながらも、まだメートの相手を求めていた。
 そのどれもが、生きることなどこんなことだと、Sayoに言っているようだった。
 アシカと違ってハーバー・シールはほとんど大きな鳴き声を上げなかった。Sayoは、今もそれが我慢強いためだからと信じている。冬になると北の海から海峡
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