濁流/within
父は日本酒と煙草が好きで、いつもオレンジ色をした「echo」がちゃぶ台の横にある小さな棚の中に置かれていた。機嫌の良いときには、紫煙で輪っかを作り、幼かった僕は無邪気に喜び、あこがれた。
喘息を持っていたせいで体の弱かった僕は、夏になるとよく発作を起こし、深夜、親に車で病院に担ぎ込まれたのであるが、ひどい時は、そのまま入院となった。父親は仕事で、母親は七人家族の家事があり、幼かった僕は病院で少し淋しい思いをしたのだが、祖父と祖母がかわるがわる見舞いに来てくれた。発作の鎮まっている時は、元気なもので、病院の売店に連れて行ってもらうと「怪獣大百科」を買ってもらい、祖父母が帰った後、一人残された病室
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