「波の声をきいて」(9)/月乃助
凍してやると、食欲を見せおいしそうに飲み込んでいた。不思議と野生動物の警戒心も反抗心も見せないのは、Hiromiのおかげだろう。
日曜日の朝、Sayoは、フィッシュ・マーケットに出かけていき、事情を話すと漁で網にかかる雑魚を取っておいてくれるのと、落とした魚の頭や尻尾、内臓など捨てるものはただでくれるとのことだった。
「そう、まだ生きてるのね」
青いバンダナをスカーフのように頭に巻いている娘は、Sayoがアザラシを連れて行くのを見ていた売り子で、Sayoが食べられないような魚でもよいから安く譲って欲しいと言うと、そんな答えを返した。
「ええ、少し怪我をした程度みたいだから、すぐに海に戻
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