「波の声をきいて」(8)/月乃助
ジャーの年取った顔を思い出し、また、ペットじゃないからね、そう娘に言っていた。それなら、ほっといて見殺しにしても良かったというの。
「とにかく、いつまでもここに置いておけないでしょ。あたし、シャワーも浴びたいもの」
娘が今度は現実的な小言のようなことを言うので、
「元気になったら一緒に入ったら良いのよ。あっちは、どっちにしろ水は好きなんだから。すぐに良くなるよ。そしたら、海に返してあげられるものね。少しの我慢だって」
そう言いながら、Sayoも本当のところアザラシがどれくらいで元気になるのか見当も付かずにいた。それよりも、その間の魚代のことが心配になるし、万が一死なれたりしたら、そっち
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