PCを捨てよ 町へ出よう(1)/花形新次
 
的な強さで勝ち続け、そしてチャンピオンになった。他人の名のままで。少年の名はウォーカー・スミス。またの名をシュガー・レイ・ロビンソン。
 何故、この話を覚えているかというと、僕に背中を向けて仕事をする親父が、話の最後
にポツリと漏らした言葉が印象的だったからだ。

「勝者はいつも他人だ。」

 僕は一瞬ギョッとして親父の背中を見つめた。僕に対する皮肉かと思ったからだ。しかし振り返った親父は、やっぱりいつもの気の好い親父で、僕に「これサービスね。」と言って、オクラ納豆を差し出した。「精をつけなきゃ、若いんだから。」と笑いながら。
 そして、「勝つことばかりが人生じゃないもんね。」と付け
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