「波の声をきいて」(6)/月乃助
たい。もし興奮して暴れたりされたら、手がつけられないのは、シャチにヒレを食いちぎられたアザラシを見て知っていた。
海の香りが裸の背にした。
何かばかなことをやり始めていると思うのに、止められなかった。
ウォーフはドラム缶のようなものの上に板を張った、そんな簡単な作りで、歩くたびに足の裏に水の動く不確かさがある。入り江の水面を走るように潮風が吹いてくるのが分かるが、よろめきながら歩いていてもそれだけがひんやりと不思議と感じられた。
この子は死なせない。
進む先には魚のショーケースの上に白いビニールの袋が、その奥で娘がSayoを見つめていた。
フィッシュ・アンド・チップスの店の
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