「波の声をきいて」(4)/月乃助
いた。どれも、二階建の寝室も二つほどありそうなもので、Sayoが住んでいたヨットなどとは比べようもなく立派なものだった。
Sayoは、陸に住むようになってから何かいつも落ち着かない自分がいるのを知っていた。
また、いつか海のすぐ近くか、海の上での暮らしに戻るのだろと思うのだけれど、それがいつなのかは、やはり今のSayoには分かりようがなかった。海岸線を散歩する時に、波や海の思いに耳を欹てれば、そんな答えがそこにありそうなのに、、Sayoはそれをしないでいた。
陽にさらされるボート・ハウスは、無防備の城のように白く焼かれ、ただの水の上に浮かぶおんぼろな船、そんなふうに今日は見えた。
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