「波の声をきいて」(3)/月乃助
カーベット・シャンプーのライラックの香りに似せた臭いがしていた。それは、新たな町の暮らしの臭いに違いなかった。
バス・タブの湯の温かさは、夏の午後潮の満ちた浅瀬に裸で浸かっているようだったが、ここには晴天も波の岩を洗う音もなかった。
「Hiromi、バスタオル、お願い。どっかの袋にはいってるから、多分、緑のゴミ袋のどれか。分かる?」
Sayoが風呂場からバス・タオルを持ってくるように言っても、リビングの方からの返事はなかった。
「バスタオル持ってくんの忘れちゃったのよ」
湯を肌から滴らせながらSayoがバス・ルームから出てくると、リビングの茶色い絨毯の上でHiromiは、所在無げな
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