「波の声をきいて」(1)/月乃助
のボタンを押すと、グラスに勢いよくコークを注いだ。そして、すぐにSayoの差し出した背の低いグラスを受け取った。店は、土曜の午後ののんびりとしたランチタイムで、それでも、数組のカップルと夏の観光客の家族連れが遅いランチにやってきていた。
アレンが新しいグラスにカクテルを作り直すのを見つめながらSayoは、204のテーブルのチップは期待できそうもないと客の方に目をやった。
Sayoが働いている店は、片側に大きく窓のあるレストランで、ダウンタウンの真ん中にあり、古いホテルの一角にあった。レンガ造りのそのホテルは、隣にあるカソリックの教会同様、百年を超える歴史があり、そんな古さにひかれて物好きな
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