「波の声をきいて」(1)/月乃助
 
きな観光客が泊まりに来るが、Sayoにはそれがただの薄汚れた爺さん婆さんのカップルにしか見えずにいる。周りの他の建物はみな、緑のガラス窓の肌を輝かせる背の高い若者の姿を見せている。
 レストランは、マネージメントが代わってからは天井から下がる大きなスクリーンのテレビやパーティー用のDJデスクなど内装を新たにしているので、瀟洒なパブ・レストランの体裁があった。それでも、煉瓦の壁にかかった白黒のモンタージュを思わせる女達の絵は、ただ、ターキーだとSayoは思うし、それを掛けて喜んでいるオーナーの趣味を考えると、このレストランがどれほど長く続くかと心配になったりするが、この店はもう四年もこの場所でやっ
[次のページ]
戻る   Point(1)