Babelogue/ホロウ・シカエルボク
鹿みたいにテロップを流しまくるから、音なんか出さなくてもだいたいの進行は理解できる。そして、だいたいの進行以上に知りたいことがある番組なんて、たぶん母校の校庭の四葉のクローバーよりもっと少ない。いま画面では若い女性のアナウンサーだかタレントだかが(そこに区別が必要なのかどうかはよく判らないけれど)どこかの漁港で取れたカニの足を啜るように食べて、「おいしい」とハートつきの薄紅色の文字で言っている。おそらくは素っ頓狂な声を上げてテレビの前の連中の気を引こうとしているのだろうけど、この部屋のテレビの画面からうかがえる彼女の「ほっぺたがおちそう」という表情は、まったくの茶番にしか見えない。テレビ。テレビが
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