「あざらしの島」(2/3)/月乃助
 
、海上に突然に立てられた巨大な十字架や尖塔のようなオベリスクに見えたりした。
 女は、きっとそれが蜃気楼などでなく、何か女への海の託宣かメッセージだと思うのだけれども、それは波ほどにはっきりとした言葉で女に語りかけてくることはないようで、だから、女はその十字架に磔刑にされた自分やオベリスクに今までしたことを彫り込むことを考えては、特別な意味を与えたりしてみた。
 そんなときにはきまって夢想を広げ、この島を出て別なところで暮らす自分を想像してみることもあった。
 新しい町に落ち着き、仕事をして生きるしっかりものの自分の姿は、この島の自分よりもとても幸せそうにおもえた。
 そこではきっと海水を
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