「あざらしの島」(2/3)/月乃助
 
水を汲んできて体を洗う必要もないだろうし。好きなだけ水道の蛇口からの水を、あふれるほどに出して食器を洗い、温かな湯でシャワーを浴びられるはず。それは、人間の便利さに満たされた本当の幸せに違いないと、女は思っていた。
 娘との二人きりだけの暮らしをしていても、女は島で人に会うことがあった。
 島には灯台のほか、やはり灯台ほどの高さがある巨大なアンテナが四本等間隔に立っていた。それは、山を越えた向こうの大きな町のAMラジオ局が送信用に所有していると、いつかそのアンテナの修理とメインテナンスにやってくる男達が教えてくれた。
 男達は一人島に住む女の顔を、娼婦を値踏みでもするように、しげしげと見つめ
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