「あざらしの島」(1/3)/月乃助
 
保存した。
 女には不思議な生活力のようなものがあって、最小限のもので最大限に食料を作り、食べ、見苦しくなく着る物をまとい、節約しながら消耗品を消費して暮らすことが難なくできた。
 暇な時には、磯で陽を浴びてまどろむアザラシ達に、娘に小さな頃したように子守唄を歌ってやった。アザラシ達は、乾いた体を寄せ合うようにその声を聞きながら気持ち良さそうに眠りにつく。女はそれを見ながら、お礼に魚でも持ってくるアザラシが現れるのを期待するのに、それは、どうしてか起こらなかった。
 海岸の岩に座り、光が踊る波の音を聞きながら、その音を解する自分を不思議に思い、時に自分が人魚の血が流れるそんな者の子孫かと思っ
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