「あざらしの島」(1/3)/月乃助
 
だけだった。
 女は、もうこの島に6年近く住んでいたが、この小さな島にもいくつかの日課があり、学校へ通う子を朝夕、小さなモーター・ボートで対岸の町のある港まで送り迎えをするのは、その一つだった。
 冬の季節以外には、昼間は庭仕事をし、魚を釣った。サーモンが海峡をあがってくる夏の季節には、疑似餌を貧欲なそれが飲み込むのを目にし、女は愚かな魚だと思いながらそれを釣って子供と一緒に食べたが、その味はいつも愚かさでなく美味なのは不思議といえば不思議だった。島には水道はなかったが電気は来ており、家にはちゃんと電気の大きなオーブンがあった。それで丸ごと焼いて、釣ったもので食べ切れないものは酢漬けにして保存
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