「あざらしの島」(1/3)/月乃助
うと最初に庭に植えてみたのだった。それが、今では、夏のはじめには島の半分を覆う土に咲き乱れるほどになった。そのためにレース模様の白い雑草達は、何も言わずに新たに現れた植民者の、紫の花に侵略され嫌気を見せては小さくしている。
島は、歩いても十分ほどで一周できる大きさだったが、女はそれがひどく気に入っていた。灯台は今でも残っていたが、随分と前に自動化されており無人になっていたし、そのため島には他に誰も住んでおらず、そこは女の所有する島のように思えた。それがきっと女をその島に住まわせている理由なのに、対岸の町のだれもそんな女の気持ちは知らず、ただ、変わり者のアジア人が住んでいると、そう思っているだけ
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