「あざらしの島」(1/3)/月乃助
 
きくなる島だった。
 磯のような島だったが、女の家のすぐ横には小さな庭とリンゴの木が一本あった。
 その島に女が来るまで、そこは岩礁と苔と雑草の他には何もない島で、木も一本も生えていなかった。それで、女は考えリンゴの木を一本植えた。女の好物がアップル・パイだったというそんな単純なことだった。
 稚拙な理由が、この島に緑をもたらし、異質の違った色を加えていく。
 夏の庭には、インゲンやタマネギ、キュウリにトマトを植え、それを収穫して食べた。そんな野菜の他にも、茎がバーミチェリほどに細い華奢な花も咲いている。
 女はコロンバインといその花が好きだったので、コロンバインで島をいっぱいにしようと
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