無題/影山影司
 
掴み放り込むだけにした。ぐるぐる巡るだけの水は一気に汚染され、穢れの濃度を増し氏の気配が濃厚になるにつれて、濁る。

 元々私は甲斐甲斐しく世話をする人間だった。部屋に入り浸る女は私のことを、「飼い主なのか奴隷なのか分らない」と評したほどだ。確かに、住み良い環境を与え、定時に餌を食わせ、病になれば薬を、繁殖の際には小型の水槽で別にして面倒を見ることもある。
 魚達はその生活に疑いもせず、保護を受けて世界を構築していた。私と、彼らの関係は、そういうものだった。

 私は神学者であった。有神論、無神論、どちらかといえば無神論の立場で研究を進めていた。学者相手にしか通用しないような探求のほかに
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