炎の鳥 ー雪の降る、家持の庭と夜空に響く、コルトレーンー /服部 剛
嘗(かつ)ての僕は頼りなく
些細なことで今にも崩れ落ちそうな
不安な、不安な
青白い魂でした・・・
今の僕は
昔の服を脱ぎ棄て
無明の闇に、瞳を閉じ
高まる胸に、手をあて
宇宙の果ての何処からか
銀河の流れに運ばれる
コルトレーンの抱くサックスの叫びと
朔太郎の囁く不思議な声が
微かに鼓膜を、震わせる
「日々を愛し、汝の欲する事を為せ・・・」
布団を被り
眠りの底へ落ちる時
遥かな過去へと遡(さかのぼ)る
「夢の窓」には映るのです
奈良時代の家持(やかもち)が
黒い哀しみを胸に
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