炎の鳥 ー雪の降る、家持の庭と夜空に響く、コルトレーンー /服部 剛
胸に抱えて立ち尽くす
深夜の寺の庭園に舞う
粉雪達の、密かな詩(うた)
ふりつもれ
ふりつもれ・・・
全ての哀しい大地さえ
覆い尽くしてしまう程
ましろい雪の歓びよ
深々と深々と・・・
石塔にたった一つの灯のともる
深夜の寺の庭園に
塵々と燃え出ずる
炎の粉雪達よ
ふりつもれ
ふりつもれ・・・
(仰いだ夜の上空に、炎の鳥は、翔けて往く)
嘗ては余りに青白く
詩人を夢見た魂は
弱ささえも抱き締めながら
やがて独り、立ち上がる
「いざ往かん、空白の日々へ!」
天上の作家が筆を握る
筋書きの無いこれからの物語に描かれる
日々の舞台の中心へ
たった一つの叫びを秘めて
古(いにしえ)の御国(みくに)から、地上へ
翼を広げて舞い降りて来る
炎の鳥
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