炎の鳥 ー雪の降る、家持の庭と夜空に響く、コルトレーンー /服部 剛
 
胸に抱えて立ち尽くす 
深夜の寺の庭園に舞う 
粉雪達の、密かな詩(うた) 


  ふりつもれ 

    ふりつもれ・・・ 


全ての哀しい大地さえ 
覆い尽くしてしまう程 
ましろい雪の歓びよ 
深々と深々と・・・ 
石塔にたった一つの灯のともる   
深夜の寺の庭園に 
塵々と燃え出ずる 
炎の粉雪達よ 


  ふりつもれ 

    ふりつもれ・・・ 


(仰いだ夜の上空に、炎の鳥は、翔けて往く) 


嘗ては余りに青白く 
詩人を夢見た魂は 
弱ささえも抱き締めながら  
やがて独り、立ち上がる 


「いざ往かん、空白の日々へ!」 


天上の作家が筆を握る 
筋書きの無いこれからの物語に描かれる 
日々の舞台の中心へ 
たった一つの叫びを秘めて 

古(いにしえ)の御国(みくに)から、地上へ
翼を広げて舞い降りて来る

炎の鳥 







戻る   Point(6)