ジェンガング/影山影司
 
「見」ているのではなくただ、狂ってしまったのではないかと考えるに至った。いままであいまいに見えていたものが、ハッキリと感じ取れたことでその存在に疑問を持つ。きっと私の目玉と脳味噌は、正しく情報のやり取りをしていないのだと。水晶体だの、視神経だの、どこかまでは正しく作動しているくせに、おそらく脳味噌だ。多分、脳味噌が、その情報を故意に狂わせてしまうのだ。
 今の今まで、自らのことを無意味に信頼していたことが、妙に恥ずかしいことのように思えた。疑問を持たない信頼は、ただの間抜けだと他人に吹聴してきたクセに、僕は僕自身のことを正しく信頼できていなかったのだ。
 コップの残骸は細かく割れ、スリッパ越し
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