ぜんぶあげるよ/ゆえづ
 
手探りで生きているイエネコは、別のいのちにイエネコがイエネコであることを教えられ続けなくてはならない。
 イエネコはお留守番の日はしょげてしまう。玩具を敷き詰めた小屋の中から一歩も出ようとせずに。家を長時間空けるとそこには、淋しさや悲しみをどうすることもできないでうずくまっているイエネコがいて、私たちは薄らと気づいてしまう。「感情」に。


 今まさに履かれようとしている部屋着のズボンは、イエネコに引っ掛けられ私を巻き込んで床に投げ出された。私は半裸でいのちへ傾れ込む。イエネコが跳ね上がって、私の顔をファサッとしたものが覆う。それはすぐさま滑り落ち、抱き留める間もなくシャツの胸元にぶらんと
[次のページ]
戻る   Point(1)