午後からの哲学者/捨て彦
 
なかなか格好良い人間の顔が描けたから、智子に見てもらおうと思って、振り返って教卓に手をついた。で、そのとき思ったんだ。へえ。これが高橋の見てる風景なのかって。で、僕は高橋の真似をして、智子を呼んでみる。
「智子っ」
智子はこっちを向いた。
「はい」
「眠かったら、運動場で寝ろ」
智子はシャーペンの芯を頬で押して出しながら
「眠くはありません。」
と言った。
「そうか。」
どうやら高橋みたいには行かないようだ。





***





僕は考える。僕の座っている席と、高橋の立っている教卓の位置との、その果てしない距離について。僕は自分の立ち位置と、高橋の
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