午後からの哲学者/捨て彦
は考える。僕の座っている席と、高橋の立っている教卓の位置との果てしない距離について。高橋は、一体どんなことを考えて、どんな経験をして、今僕の目の前に立っているのだろう。今までに何人の生徒を教えて、何人の学生と話をして。
僕は小学校を出て、中学校に入って、それで今は二年だ。小学校では、運動も勉強もそこそこだった。野球は苦手だ。でもサッカーは好きだ。遠足もすきだったし、ひそかに編物も好きだったけどそれは内緒だ。友達に冷やかされたときからこのことは封印している。
高橋は一体どんなことをして生きてきたんだろう。なんで歴史なんて地味な勉強をしてきたんだ。そんなに面白いのか?日本の歴史なんて。僕はちっとも
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