夕闇の暮れる、その前に ー祖母の墓前にてー /服部 剛
 
無人の霊園に吹き抜ける
夕暮れの風を頬に受けて  
墓石の下に隠れた祖母に 
両手を、合わせる。  

背後を振り返り 
見渡す故郷の山々に 
あの頃よりも増えた家々は埋もれ 
風景の真中に建つ 
白い母校のベランダから 
吹き鳴らす 
ブラスバンドのトランペットは 
あの頃と変わらぬ音色で 
染まりゆく夕空に、響き渡り 

先ほど下りてきた 
曲がりくねった通学路の坂で  
懐かしい友と野球をした 
団地の庭も高い敷居に囲まれて 
すっかり廃墟になっていた 

已(や)むに已(や)まれぬ哀愁に 
消えて
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