夕闇の暮れる、その前に ー祖母の墓前にてー /服部 剛
えてしまった友の姿に
今にも潰れそうな胸を抱えて
婆ちゃん、この墓場まで
俺は歩いて来たんだよ
三途の川を渡る前
何処かへ吸い込まれそうな渦の中から
必死で僕の名を呼んだ
あの朝から
もう半年以上の月日は過ぎて
そうしてあらゆるもの達は
風景の中へ溶け去ってゆくのです
夏空に、蝉が鳴いては地に、堕ちて
秋の夜の、草の隙間に、すずは鳴り
それらの季節を通り過ぎては
詩人なんぞを志し
ぶらぶらしているこの俺も
そろそろ
ひとすじに胸を焼く
一輪の花に、逢いに往きたい
夕闇が暮れきってしまう、その前に。
祖母の遺骨の隠れた墓前にて
そっと両手を合わせる、いのりよ
揺らめく細い糸となり
暮れなずむ夕空へ、昇れ。
戻る 編 削 Point(6)