宗左近さんの詩の捨て身で描かれている静かさ/イダヅカマコト
 
中で、ひときわ際立つのがその音が崩れる6連目の「いってしまうものはよみがえってこない」です。
「こない」「ように」という二行連続でイの音で止まる言葉は、静かなしらべのから浮かび上がって動けなくなっているようです。

この詩の静けさがどこから来たのかを考えると、この詩集を読んでくださった方はきっと、詩集のの冒頭に収められた、炎える母』の詩篇に思いを寄せてしまいます。

東京の空襲で焼死したお母様を描かれた『炎える母』は戦後20年を過ぎてようやく世に問われた戦争です。
太平洋戦争中、徴兵を拒否するために体重を20kg落とし、精神病だとまで言い張った宗左近さんですが、空襲という形で戦争から逃
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