宗左近さんの詩の捨て身で描かれている静かさ/イダヅカマコト
 
いる鏡のように)

夏は空だけが冷えている
(水のなかの鏡のように)

雲が暑さのふちにこぼれている
(空に浮いた鏡のように)

風が吹きあがっては青んでいる
(夢の中の鏡のように)

夜が深まる光の中に息をとめてくる
(砕ける前の鏡のように)

いってしまうものはよみがえってこない
(とけている鏡のように)

見えないほととぎすが鳴く
水の中の鏡の中で}

この詩は小倉百人一首をもとにして書かれた『鑑賞百人一首』という1973年に出版された詩集の一篇です。

「いる」「ように」「いる」「ように」「くる」「ように」という何度も繰り返されるリフレインの中で
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