宗左近さんの詩の捨て身で描かれている静かさ/イダヅカマコト
 
追いぬいて/走っているものが走っている」と現在形で走り続けている語り手は「赤い釘」のようになっています。
「赤い釘」の熱さはどこからくるのだろうかを考えると、語り手を追いかける火でできた、長細い影が見えてきます。

『愛しているというあなたに』という詩で

引き返し抱き起こすこともできたはずなのに
一目散に走りに走ってふりむきませんでした
見殺しにしたのではないそれ以上です
むしろ積極的に母を殺した
その思いをふかめるためだけの以後二十二年
やむをえなかったのだゆるされていい何度か
そう認めようとした心を何度もわたしの行為が
裏切ってゆく八千三十日あまりのあけくれ

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