宗左近さんの詩の捨て身で描かれている静かさ/イダヅカマコト
 
うしろをふりかえっている

  母よ
  あなたは
  炎の一本道の上
  つっぷして倒れている
  夏蜜柑のような顔を
  もちあげてくる
  枯れた夏蜜柑の枝のような右手を
  かざしてくる
  その右手をわたしへむかって
  押しだしてくる
  突きだしてくる

わたしよ
わたしは赤い鉄板の上で跳ねている
一本の赤い釘となって跳ねている
跳ねながらすでに
走っている
跳ねている走っている
走っている跳ねている

一本道の炎の上

母よ
あなたは
つっぷして倒れている
夏蜜柑のような顔を
炎えている
枯れた夏蜜柑の枝のような右手を

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