限りある世界で嫉妬する/渡邉建志
 
ある。
黒い黒い黒い目で、いつも川の向こうを見ているこの人のあり方を
私はとてもいいなと思う。

閉じられた盆地の空の下で、
川の向こうには虚無しかない。



++ 



      こいのぼり    竹上泉(2001年)






      昨日
      男の子の死んだ家に
      こいのぼりが上がっていた
      私はそれが空に翻るのを見た
      五月











++

またしても男の子が死んでいるなか、一瞬のシャッターを切る音が聞こえる。
竹上は目の人だと思う。そして彼女は瞼で
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(3)