戦争を捉える方法 −奥主 榮詩集『日本はいま戦争をしている』−/大村 浩一
 
、民衆の視点からの事実に基づいた歴史認識を追求する
立場を彼が固守できたことと、社会の奔流からどこまでも切り崩されてしまう
(それゆえに加害者にも御都合主義にもなる)個人の弱さに立脚して描いたこ
とにあるだろう。

 一作をとり上げることで、この詩集の魅力を紹介することは実は難しい。そ
れぞれの詩がそれぞれの役割を背負っているためだ。例えば序盤の『こまねず
み』は、この位置に置かれたことでこの詩の背景に個人の閉塞感があったこと
が強く意識されたりする。この詩集には大きく分けて歴史を軽快に風刺したも
の、戦中・戦後を生きた人それぞれの立場から錯誤として書かれた賛戦詩、そ
して客観
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