戦争を捉える方法 −奥主 榮詩集『日本はいま戦争をしている』−/大村 浩一
正確な事実が民衆に十分に追求され認識されないまま終了から64年以上が経過
してしまったように、私には思われる。
この厄介な題材を、奥主が自分の第一詩集のテーマに選んだと知った時には
私はいささかの危惧を感じた。このテーマは詩人にとっての踏み絵で、少しで
も不審なところがあれば右からも左からも批判される。結果第一詩集をもって
詩人生命の終わり、にもなりかねなかった。
結果としてそれは杞憂だった。むしろ主題の厄介さゆえに、決して無視でき
ない詩集として現代に吃立している。父親が旧陸軍の士官だった彼にはこれを
書くことは宿命だったのかもしれないが。
成功の最大の要因は、民
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