戦争を捉える方法 −奥主 榮詩集『日本はいま戦争をしている』−/大村 浩一
 
関して、会場に来た老婆が「自
業自得だ」とにべもなしだったのが印象的だった。
 加害者でもあった日本の民衆の立場は難しい。この詩集の詩『パッション』
にもあるように、受難はそれを受けたものにとって「ただ一度だけのことが/
幾度となく心を苛み/蝕んでいく」ものであって、後からどれほどの償いをし
ようと「無かったこと」にはできない。むしろ続く悲劇を防ぐために記憶に留
められるべきものとされるのだが、その体験が特異なもの、共有困難なものと
見られがちなために忘却されたり歪曲されたりする。歴史的・政治的背景があ
ればなおのことで、この詩集で主題となった15年戦争こと日中戦争については、

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