あの夏「拝啓、ジョンレノン」/ふくだわらまんじゅうろう
度きりの夏を
人生の
過去も未来も捨て去ってでも
手に入れるべきその夏を
その一瞬を
手に入れる愚行のために
この手を引っ張ってくれたのだ
引っ張って
連れて行ってくれたのだ
私はついて行った
彼女の謎多き心の螺旋の中に飛び込んだ
海にも行った
いや
それは嘘だ
彼女と海には行ってない
行けばよかった
こうしてみるとそれはつくづく心残りだ
行っても彼女は泳がなかっただろう
だけど、もし、彼女と海に行っていれば
その場のエネルギーに私と彼女とふたりで晒されていれば
あるいは、今現在とは違う風景が
与えられていたのかもしれない
それがどのような風景であるにせ
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