あの夏「拝啓、ジョンレノン」/ふくだわらまんじゅうろう
女の最初の立場は「ともだち」だった
私は「ともだち」として彼女をあたたかく迎えた
だけど彼女の激情は仄かに
静かに
しかし
決して絶えることのない湧き水のように
辛抱強く私の心を侵食した
そうして彼女は「ともだち」から「愛人」になった
その一線を越えさせるに足るだけの説得力のある眼差しで
彼女は私を貫き通した
まるで晩い夏の夕立の稲妻のように
そして私はその甘美な呪縛と催眠の最中で
彼女とひとつになった
それでも私の中にはまだ
「恋人」の血が残っていた
それでも彼女は
百年に一度のあの波を待つ少女の眼差しで
遠く沖を眺めるように
時が来るのを待っていたのだ
す
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