詩人達の夜明け /服部 剛
ある者は
長年夢見ていた舞台に上がれず
どしゃぶりの雨の中
膝を落とし
ある者は
束の間な恋の物語に幕を下ろし
曇り日の街の迷路を
今日も彷徨い
ある者は
ようやく見つけた土方のバイトで
灼熱の太陽の下
額に汗して、重荷を運び
ある者は
少年の頃に世を去った父親の
遺言のように古びた葉書を手に
夕暮れの窓辺に頬杖をつき
そしてある者は
詩人達の物語を終えた夜の劇場で
無人の舞台をじっと見つめ
人も疎らな客席で拳を震わせ、泣いていた
そんな彼等の面影を
思い浮かべて
いてもたっ
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